全国から、人が、物資が、善意が新居浜に集結
未だ生々しい傷痕を残す、度重なる台風の被害。今まで現実味のなかった「災害」という言葉が、こんなに身近になるとは、ほとんどの人は思いもよら なかったと思う。8月18日の台風15号による集中豪雨に続き、9月29日の台風21号上陸により、被災箇所は更に拡大。今回は、新居浜市社会福祉協議会 によって設立、市内各地にて活躍の「災害ボランティアセンター」にお話をうかがった。
8月18日集中豪雨災害」。その想像を絶する被害に、新居浜市社会福祉協議会が「何か出来ることはないか…」と考え、8月19日正午過ぎに、経験もない まま「市社協・災害ボランティアセンター」を設置することを決定。ホームページで発表したことがはじまりだった。すぐにボランティア活動経験のある、さま ざまな機関から協力したいとの連絡があり、21日の朝には7月に災害を受けたという、福井県・危機防災課から、4トン車2台分の活動機材(一輪車・スコッ プ・土のう袋・タオルなど)の提供を受ける。県職員ボランティアをはじめとした、多くのボランティアからのすばやい応援。それがあってこそ、突然の災害に 戸惑う中でも救援活動ができた。
災害ボランティアとして企業など各方面から参加・協力があったが、中でも特筆すべきは、高専生や市内5校の高校生の活躍だろう。災害の現場だけでなく、さ まざまな場面で活躍したボランティアもある。救護所での看護や送迎、後片付け、洗濯…。ボランティアの送迎に運転手付きのバスの提供や、浴場の提供など。 負傷した場合の手当ても病院から協力があった。他にも、活動に必要な機材の購入などのため、活動支援金が、全国各地から集まった。
「8月18日集中豪雨災害」の被害は主に川東地区だった。現地事務所の設置などにより、機動性の高い活動を展開。救援活動に見通しがつき、「市社協・災害 ボランティアセンター」を閉鎖したのが9月10日。全力で復旧作業にかかりつつも、心中ほっと胸をなで下ろしたところだった。しかし9月29日、台風21 号の上陸。今度は川東地区だけでなく、広範囲にわたって大きな被害が出たことにより、再び活動を再開。市内全域に被害が出たことにより、市民からボラン ティアの協力を得ることが難しくなる。国道11号線や高速道路、JR予讃線などの陸路は土砂崩れなどで封鎖。四国外からのボランティア参加のために、フェ リー会社が協力。フェリー往復交通費が無料になる「ヘドロかき出しツアー」と名付けられた、台風21号災害復旧ボランティアを緊急募集。すぐに大きな反響 があり、四国外から多くの方々からの参加を受けることができた。
また今回も、各小・中・高校から学生のボランティアが参加。床下の泥を取り除く困難な作業や、家財の運搬、土砂の撤去など、人手がないとできない大変な作業にボランティアの方々が活躍した。
被災された方で、ボランティアを必要としている方は、独居やご夫婦二人の高齢者のご家庭が多い。子供が遠い所に住んでおり、実家が災害にあってもなかな か帰ってこれず困っている、という方も。「今回の災害により、隣近所や親戚、自治会などとのつながりが重要だと感じました。少し言い方は違うかもしれませ んが、せめて今回の災害の副産物として、昔ほど重要視されなくなった、そういう地域単位での付き合い、団結力が強くなれば…と思いますね」
9月29日の台風21号の被害は新居浜だけで、橋破損箇所が4箇所、道路寸断箇所6箇所、床上浸水が490棟、床下浸水が400棟、土砂崩れは9箇所にも のぼる。災害がもたらした被災処理は、本当に気の長い大変な作業ばかり。ボランティアに参加して下さった方々に感謝するとともに、今、人とのつながりを嬉 しく思うといった、日常では忘れられがちな「人間らしさ」を、もう一度見直す機会に恵まれたように思う。
お話を伺い、経緯を追うごとに協力してくれるボランティアの名前が次々と挙がる。そのたびに、「困っている人を助けたい」という、その気持ちがどれだけありがたいことか、今回の災害では被災者の側に立って、しみじみと知ることができた。
起こってほしくない災害。しかし、自然災害は、いつ、どこで何が起こるか分からない。今回、全国からの「善意」が集結した新居浜。今度は私たちが何らかの形でお返しをしたいと思う。